【インタビュー_家族野菜Tsugutsugu】

滝ヶ原のファーマーズマーケットには、毎週Tsugutsugu農園の野菜が並ぶ。特に、色とりどりの人参やおいもさんは自然の甘みたっぷりで大人気。母屋での食卓への登場頻度もずば抜けて高い。秋晴れが 気持ちの良い朝、Tsugutsgu農園にお邪魔し、芋掘りのお手伝いさせて頂きながら話を聞いた。

入るとすぐに、大人がすっぽり入りそうな、大きな肥料製造機が目に留まった。
化学肥料を使 わないtsugutsugu農園では、肥料も手作りだ。材料となる米ぬか、油粕、魚粉は、知り合いの業 者さんから安く譲り受けることで、かなりコストを抑えられる。それらを発酵させ、独自の肥料 が出来上がる。
「本当は化学肥料を使いたくないけど、市場に出回っているものでは高すぎるし、自分たちで は作れない。という声を、他の農家さんからもよく聞きます。そういった農家さんたちのために も、肥料の販売を、なるべく安く出来ないかと考えています。」そう語る彼も、最初は手探りでの スタートだった。

高嗣さんが、彼のルーツでもある、小松市中海町の耕作放棄地を借りて、農業を始めたのはわずか5年前のことだ。以前は、フリー ペーパーの製作を行っており、バリバリのオフィスワーカーだったという。
「仕事は楽しかったし、やりがいもあった。ただ、家族と食卓を囲 む時間が、あまりにもなかったんです。」
彼が、仕事を離れる最大のきっかけとなったのは、”家族”。そん な想いで始めた農業だからこそ、農薬や化学肥料を一切使わないと いうことに、とことんこだわった。
「家族が食べる野菜を作るとしたら誰だって、まずは安心して出 せるものを作りますよね。大切な人の健康を思い、自然と、完全無 農薬の栽培方法になりました。」

中海町という土地も、Tsugutsuguの由来の一つだ。幼少期によく遊んでいたこともあり、親戚 や知り合いも周りに多い。1人ではなかなか難しい農業において、人との繋がりは重要だ。
「実家が農家というわけでもなく、全くの初心者だったので、近くの農家さんに教えてもらいな がらのスタートでした。土の差や、気候の差で、出来るはずのものが出来なかったり、予定通り にいかないことも多いので、周りにサポートしてくれる人がいるのは、とても心強いです。」
馴染みのある土に根をはり、故郷や家族を”継ぐ・繋いでいく”という意味が込められた、「家族野菜Tsugutsugu」を誕生させた。

“繋がる”ことを大切にしているTsugutsugu農園は、開かれた農家を目指している。 「例えば、スーパーで農家さんの顔写真があるからって、100パーセントの信頼を与えられるわ けじゃないですか。だから、子どもと一緒にこうして芋掘りを体験できる機会を設けたり、実際 に見て、触って、感じてもらえる機会を増やしたいと思っています。」

毎週土曜日、滝ヶ原にTsugutsugu農園の野菜が並ぶと、なんだかホッとする。持ってきた野菜たちの説明をしてくれる、高嗣さんの表情はいつも柔らかい。まるで彼の人柄を詰め込んだような、優しい野菜を今週もみんなで頂くことだろう。

文:Chihiro Inaguma
写真:Yufulei

2021.1.28