L’Effervescence
総料理長 生江史伸氏
滝ヶ原ファーム来訪記
さかのぼることおよそ一ヶ月前、西麻布の二つ星フレンチ、L’Effervescence(レフェルヴェソンス)で総料理長を務める生江史伸氏が滝ヶ原ファームに滞在してくださいました。
滝ヶ原ファームを中心に近隣を俯瞰して、生江氏の琴線に触れたいくつかの場所や人を訪ね歩き、小松の風土、食材に出会う二日間。まずは、小松の風土を代表する日用町の苔庭の訪問からスタートしたこの旅、生江氏の体験を通して語られる言葉の一つ一つに、新鮮な知的興奮に満たされる時間となりました。
この旅を通じて、9/19日、TAKIGAHARA FESTIVALにレフェルヴェソンスの料理人お三方の参加が決まったその背景を、一部紹介いたします。
自然と共生する日本古来の生活文化を継承する日用町
石川県小松市の日用町(ひようまち)は、加賀温泉郷の粟津温泉から車で約3分に位置する里山集落で、現在7世帯が暮らしています。代々林業が盛んで、杉の木立に苔むす庭と古民家、初夏にホタル舞う小川と田園など日本の美しい自然と文化を残し、全国農村景観百選に選ばれています。日用町の杉は、「日用杉」と呼ばれ、石川県を代表する杉の品種の産地です。第66回全国植樹祭では、天皇陛下が、日用杉をお手植えされました。


日用町の苔
日本文化を象徴する植物として国歌にも詠まれる「苔」。日用町の苔庭は、多様な苔(蘚苔類)が見られる日本有数の苔庭 として高い評価を得ています。 北陸の風土、山間の谷筋に沿った地形に加え、杉林を間伐することで、地表に日向、半日蔭、日蔭の環境が生じ、それぞれの環境に適応して多様な苔が生育しています。専門家の調査では町内で48種類の蘚苔類が確認されており、当地で日本蘚苔類学会も開催されています。現在は、住民によって設立された日用苔の里 整備推進協議会が、「苔の里」として苔庭の整備・管理を行っています。
*上記、叡智の杜オフィシャルサイトから転載
http://forestofwisdom.org/


小松イ草を通じて北限の品質を知る
小松を代表する産物の一つ、小松イ草。江戸時代、日本の物流を支えた北前船の隆盛と共に、小松イ草の名も日本中に届くことになりました。1950年代の最盛期には小松市内に千四百軒を数えたイ草農家は、時代の変遷と共に減り続け、現在では宮本農産一軒になりました。危機的状況を一家で支えている宮本農産の五代目、宮本健一さんを訪ね、小松イ草の魅力を聞いてきました。

小松イ草は、今からさかのぼること約550年前、小松に自生していたイ草を移植して始まりました。現在も、小松イ草の固定種に近い、「夕凪」という品種が つくられていますが、原種に近いためか、熊本などの他品種と比較すると育てづらく、残念ながらその生産量はごくわずかです。
三代目藩主前田利常によって産業化された小松イ草は、幕府に献上するほどのクオリティまで高められ、小松イ草独特の畳表の風合いを獲得するに至りました。雪の下で冬を越すため表面が固く茎が太く、「泥初め」という伝統的な染色をほどこされる小松イ草は独特の銀白青色をしており、他の産地のものとは一線を画す個性をもっています。

小松イ草の最大の特徴は、北限のイ草であること。イ草に限らず、北限でとれたものは、品質が高いと言われています。その他、和紙の最高の材料である「雁皮」も、ここ小松近隣が北限と言われており、「北限」が小松市の特産の個性の一つともいえることを、今回の旅で知ることができました。


今回の生江氏との旅で最も深く印象に残っているのは、一流の料理人は、料理以外の広範囲にわたる幅広い知識も、その立ち居振る舞いも、周囲への気配りも、全てが一流であったこと。滝ヶ原の地でゆったりと羽を伸ばしていただきましたが、常に集中力を切らすことなく、いつもすがすがしい空気を纏った方でした。
レフェルヴェソンスのwebサイトのメッセージの一文に、“海の大きく豊かな自然を慈しみ、田畑や牧場の汗に心から感謝し、目に見えない酵母や微生物に想いを馳せ、心や身体が自然と沸き立ってゆく(effervescence)、そんな世界に皆様をいざなって参りたいと思っております。”と、記されていますが、生江さんのその思いと、滝ヶ原ファームの思いが、この二日間でシンクロする瞬間があったように思います。来る9/18-19、ここ滝ヶ原ファームにて開催されるTKIGAHARA FESTIVALで、レフェルヴェソンスのすてきな食卓が用意されます。ぜひこの地に足を運んで、里山の魅力を存分に味わえる最高の食卓を、皆様と共に味わえたら幸いです。

レフェルヴェソンス
http://www.leffervescence.jp/
106-0031 港区西麻布2-26-4
Tel 03-5766-9500
Fax 03-5766-9501
E-MAIL info@leffervescence.jp
Lunch 12:00-16:00 (13:30 L.O)
Dinner 18:00-23:30 (20:30 L.O)
TAKIGAHARA FESTIVAL – Craft and Craft Food –
09/18日 & 09/19月祝
詳細内容:https://www.facebook.com/events/1214240658606240/
参加申込:http://takigaharafest.peatix.com/
2016.9.15